huluを眺めていたら、ふと目に留まった『コロニア』。
あらすじを読む限りでは結構重い内容の映画な事は分かっていた。
でもいざ観てみたら、予想以上の重さについていけない時も・・・
しかもほぼノンフィクションほぼらしいし。
重い映画のレビューを書くのはちょっと腰が重いのですが、せっかく観たので書いていこうと思います。
評価
この映画はノンフィクションかつ、内容が重い映画。
だからいつもの基準で点数をつけにくいけど、つけるなら3.5くらいでしょう。
点数でみると3.5点は普通といった印象かもしれませんが、実はここでいう3.5点は非常に高いです。(※当レビューサイトでの評価の話です)
というのはどういうことかと言いますと、この映画はノンフィクションです。
ノンフィクション映画は実際にあった事を映画にしているのでフィクション映画に比べると色んな意味で評価が低くなりやすいと思っています。
理由は映画を作るうえで『圧倒的なアドバンテージの違い』があるから。
ストーリーを盛れない、演出も盛れない、構成は盛れないストーリから考えるしかないから幅が狭い。
というように色んな意味で機転が利きにくいのです。
ですからノンフィクションの3.5点はフィクションで言うところの4点くらいでしょう。(あくまでも個人的な見解ですが)
ということでフィクションなら4点越えも射程圏内な『コロニア』。高評価の理由に迫ってみましょう。
理由としては演出が良かったです。ハラハラドキドキするシーンが多く、作品の中に入り込むことができます。
特にコロニアを脱出するシーンとラストの飛行機で国外に飛び経つシーンはかなりの緊張感に感じられました。
いつのまにか主人公達に感情移入している自分がいたので「早く逃げて!」ではなく「早く逃げなきゃ!!」と主人公の視点になっていました。その結果とてもスリルを感じれましたよ。
普通のシーンにもどり緊張がほどけたかと思うと今度は「この映画は本当にあったことなんだよな」という思いが頭の中を巡ります。
そしてより一層『リアル感』が増して次の緊張感あるシーンではさらにハラハラドキドキするという連鎖がありました。
この連鎖をハッキリ『良い』とは断言できません。(実際に起こった悲惨な物語なので)
しかし『映画』としてはとても良い連鎖だったと思います。
それが高評価の理由です。
それ以外ではなかなか評価がつけにくいです。ストーリーがイイなんて冗談でも言えませんし、演技がイイもちょっと違う気がします。(何度も言いますが実際にあった悲惨な事件のことなので)
ということで今回の評価はいつも以上に曖昧な採点の仕方でした。すみません。
感想
胸が痛い話
この映画がノンフィクションと分かったのは、映画を観始めてから。
クーデターが起こり、捕らわれた恋人を助けにいく物語という事は知っていましたが、まさかあんなに忌々しい要塞があったとは・・・
あらすじをパッと見しすぎたことにより予想以上のものが出てきてビックリしました。かなりの衝撃です。
映画を観ている間は集中しているせいかそこまで気になりません(とはいえ少しは気になりましたが)でしたが、観終わってすぐに「こんなにも無情な話があっていいものか」と胸が痛くなる感覚がありました。
コロニア・ディグニダ
「あり得ない。」
「一体なんなんだこの集団は!?」
レナがコロニアに入所してから何度もこんな思いが頭の中を駆け巡りました。
理解できなかった事は多々ありました。
- 男と女と子供を別々にして暮らさせる事。
- そして神を崇拝している割には皆があまりにも非道徳的な考えをしているという事。(体罰の中に愛が感じられない)
- 『あまりにも仕事が重労働すぎなのでは?』という事。
- 寝る前に皆に配っていた怪しい薬は何?
その他にも多々ありますがざっと挙げるならこんなとこでしょう。
そしてこの4つとは比にならないほどの最大の疑問があります。
それは
「そもそも何のためにこんなクソみたいな施設があんの?」
ということです。
一体全体何故あんなに非道な施設を作ったのでしょう!?
この答えはウルセルが話していました。
ウルセルとレナが一緒にジャガイモの皮を剥こうとしているシーンでのこと。
「どうしてこんな施設を作ったの?さっぱり分からない」と問いかけるレナに対して「あの男の趣味よ、権力と音楽と少年に溺れて、、、アイツの極楽」とウルセルが言いました。
ということで一体何故クソみたいな施設を作ったの?という質問の答えは・・・
『教祖シェーファーが自分の為だけの楽園を築いただけ』
ということになりますね・・・
はいくそーーーーーーーーーーーーー!
シェーファーが自らの欲望の為だけに建てた農業コミュニティが『コロニア・ディグニダ』
皆さんもうお気づきだと思いますが、シェーファーはガチでヤバイ奴です。
権力を振りかざし、コミュニティの人々をこき使いまくる毎日。
自分だけが楽できるコミュニティを作り上げてしまいました。
ウルセルがいったように権力と音楽と少年に溺れたシェーファーあ本当にヤバイやつですね。
ここでシェーファーについてもっとよく知るためにコロニアを創った理由の一つである「少年」に焦点を当ててみますね。
男の子が好きなシェーファー
シェーファーは男児が好きでした。
これは何故そう言えるかと言うと、レナと初対面したシェーファーはいきなり、上着を脱がせます。そしてブラを見ると「鼠色の粗末な服で娼婦の肉体を隠していたな」と言います。
このことからシェーファーは娼婦に良いイメージを持っていない事がうかがえます。
次にレナが男の集会に呼ばれたときに、シェーファーはレナに向かって「女は皆ウソつきで、一皮剥けばみだらな悪魔だ」とレナを罵りました。
ここでのシーンでシェーファーは『女に対して良いイメージを持っていない事』が窺がえます。
シェーファーは男好きの可能性が出てきました。
そして、それを決定づけるのは風呂場で男児たちをパンツ一枚にして並べさせ、合唱させていたシーン。
この状況だけでもあまりにも不自然で異様な光景でしたが、次の瞬間「この3人から」と3名の男児を指差してシャワー室に連れていきます。
シェーファーはきっとシャワー室で男の子たちに性的ないたずらをしていたのでしょう。
これは断言はできません。行為自体が描かれていたわけではありませんから。
しかし、ただ身体を洗うだけのシーンなら、それはそれで不自然はありませんか?
男児が身体を洗うシーン。そんなシーンハッキリ言って要りません。
それに男の子たちが身体を洗い始めた後にシェーファーはシャワー室に入っていきました。そして靴を脱いだところで映像は歌っている男の子たちに移されます。
何故靴を脱いだのでしょうか?
何故男の子たちはシェーファーがいなくなっても歌を歌い続けるのでしょうか?
もうこれ以上は書かなくてもお分かりですよね?
シェーファーは「少年たち」とあんな事やこんな事をするためにコミュニティを創ったのです。
恐ろしいですねぇ・・・
シェーファーは氷山の一角にすぎなかった
映画のエンドロールに書いていますが、「コロニア・ディグニダ」は崩壊しました。
施設から流出した写真の公開で国際的スキャンダルとなったとのことです。
そりゃそうですよね。それだけの事をしたんですから国民全員の前で償うのは当然の事だと思います。
しかし次の瞬間自分の目を疑いました。
テロップにこう流れたのです。
「ピノチェト政権下ではシェーファーは起訴されず」
???
起訴されずって事は無罪釈放という事。
一体何故!?
答えは極めて単純なものでした。
当時の大統領である「アウグスト・ピノチェト」がシェーファーを匿ったのです。
理由は簡単に言うなれば、『シェーファーが捕まってしまえば、ピノチェトにとって都合が悪くなってしまうから』でしょう。
ピノチェトとシェーファーは繋がっていました。
ピノチェトがシェーファーに毒ガスを製造するように依頼していましたし、クーデターが起こった際に左寄りの思想を持った人々を拷問した時もシェーファーに頼んでいました。
この二つの事は映画のシーンとして登場していますので紛れもない事実なハズ。
多大なる資産を持ち、自らの要望に応えてくれるシェーファーはピノチェトにとって良い駒だったのです。
というわけでピノチェトが匿ったことでシェーファーは起訴されることなく生き延びたのです。
シェーファーが狂っている以前に国のトップである大統領が狂っていたって事ですね。
それに大使館の人たちもシェーファーに加担していましたね。
エンドロールにもこう書かれていましたよね。「シェーファーに協力した罪に問われたものはいなかった」と。
ピノチェト大統領、教皇シェーファー、そして大使館の職員たちがうまく口裏合わせて、全員が全員を守ったのでしょうね。
そう考えると、もはや国全体の感覚がマヒしていたのかもしれません。
「狂ってやがるぜ!」
まとめ
教皇シェーファー、そしてピノチェト独裁政権。
とても狂っている物語でしたね。
ノンフィクションとありますがどこまでが本当で、どこまでが嘘なのかは分かりません。
ですがネットで調べる限りではほぼ偽りなく描かれているようです。
ちなみにレナとダニエルは架空の人物らしいですね。
「こいつらめちゃくちゃヒーローじゃん!かっけぇ」と思っていただけに結構ショックでした。(笑)
という事でこれにてレビューを終わりたいと思います。
最後まで読んでいただいてありがとうございました。
